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キーボー島マガジン

「キーボー島マガジン」では,子どもたちの活動の様子,指導のアイデア,成果などをお伝えしていきます。

編集・発行/キーボー島アドベンチャー事務局(スズキ教育ソフト内) 

 

 Vol.8
2003.12.19

キーボード指導のコツとポイント

徳島県 池田町立池田小学校教諭 中川 斉史(なかがわひとし)
※ 所属は掲載時点のものです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「キーボー島アドベンチャーにも,指導のコツやポイントがあります」----今回登場していただくのは,開発メンバーのおひとりとして,キーボード入力指導の経験と知識を「キーボー島」に注いでくださった中川先生です。子どもたちの意欲を必ずやスキルアップにつなげてあげたいと願う全ての先生方へ,中川先生から指導法をアドバイスしていただきます。

 

 「子どもたちが楽にローマ字入力できるようにさせたい!」先生方は,そんな思いを持って,キーボー島アドベンチャーに登録をしているものと思います。キーボー島アドベンチャーは,子どもたちを夢中にする工夫をいたるところに施しています。しかし,ただ単純に「自分たちでどんどん好きなだけやってみなさい」では,どうもうまくいきません。そればかりか,新たなスキルの差を生じさせたり,不適切な打ち方がくせとなって身に付いたりします。やはりキーボー島アドベンチャーにも,指導のコツやポイントがあります。9月当初からやり始めていた先生方も,噂を聞いて最近やり始めた先生方も,ご自分の学級の様子を頭に浮かべながら読んでいただきたいと思います。

Scene1:子どもたちにはじめてキーボー島アドベンチャーをさせるとき 

トレーニング場にあるタイピング動画

 キーボー島アドベンチャーの画面を見せると,とにかく子どもたちは,「やってみたい」という気持ちになります。何事も動機付けが必要ですが,「楽しく学べそう」「早くやってみたい」等の気持ちを持ちつつ,目標が見えていなければいけません。そのために,たとえば,先生が模範打ち?を示してあげたいですね。一種のあこがれを持たせるというのもよくあるパターンです。しかし,それは私にバク転をして見せろと言うのと同じで,「無理だぁ・・」という場合は,同じ小学生がタッチタイピングで,そつなく入力している動画コンテンツを利用しましょう。(トレーニング場メニューの中のタイピング動画)
 ここで気を付けることは,ローマ字入力練習で級をあげることと,実際の活用場面でストレスなく文字を入力できることは,基本的には別の次元であるということです。そこで,キーボー島アドベンチャーを設計するときに,これら2つの次元を極力一致させるようにしました。つまり,級があがっていくにしたがって,通常の文字入力が自然と速くなっていくように通常の活用場面と一致させた内容にしています。
 ということで,たとえば,タッチタイピングが少しはできるという先生方は,子どもたちの前で,話し合いの内容をその場で打ち,液晶プロジェクタを通して見せるなどのパフォーマンスをしてみては,どうでしょうか。ただ早打ちを自慢するのではなく,早く打てるということは今目の前で示したように,すぐに記録を打つことができる。これは,手で書くより早いこと,後で記録を整理するときに都合がよいことなどを実際の場面を通して,子どもたちに示すことで,「なぜローマ字入力を練習しなければいけないのか」という意味を提示していることになります。
 九九を覚えるときに,九九を使う場面を並行して用意しておくことが大切なのと同じように,ローマ字を鍛える部分とそれを使う部分を用意することをいつも先生方は意識しておくことが大切です。

Scene2:母音の指導  

指導用の大型カード(磁石付き)

液晶プロジェクターで指の影を利用 

 ローマ字入力を体に覚えさせるためには,母音が大切です。アルファベットの読めない子どもたちにとって,Aを「エイ」と読ませながらのローマ字指導は子どもたちを混乱させます。アルファベットの読み方はまた別の次元です。ここでは,読み方にこだわらず,とにかく「A」のある位置と,どの指で押さえるかについて指導します。そのためには,液晶プロジェクタやOHCなどの大型提示装置が必要になります。なければ,画用紙に描いてカード形式にしておくことも有効です。
 左の写真は,OHCで実際のキーボードを映し,あえて影を出すようにしてどの指でどこを押さえるのかを分かりやすく説明しているところです。影になるデメリットを逆に生かした方法です。
 ちょうど30級がこの母音との出会いです。この出会いを適当な指で行ってしまうと,級があがるにしたがって,結果的に「変なくせ」となってしまいます。ふだん使われない指も多く,子どもにとっては大変でしょうが,ここはひとつ徹底させたいものです

Scene3:子音への移行 

 子どもたちにとって母音の習得はおそらく苦労なくできるでしょう。29級から控えているのが,子音との組み合わせです。ア行は,ひらがなとローマ字が1つのキーで対応していましたが,カ行以下は組み合わせとなります。ひとつの行を示すための[K][S]・・と,その言葉をのばしたときにできる音(「かーーーぁ」→「あ」だから,「A」となる)の組み合わせが頭の中でできれば,ローマ字はすぅっと理解できます。反対に「か」は「KA」のように一対一対応をしてしまうと,ローマ字の仕組みを理解するまでに時間がかかります。九九も,途中で忘れても仕組みがわかっていれば,その段の数字を前の数字に加えれば答えが出せるのと同じことです。無条件に鍛える部分と仕組みを理解しておくことは,対になっています。カ行,サ行までは,どんどん子どもたちは進んでいきます。だからといって,「じゃ,てきとうに休み時間にやりましょう」といって,放っておくと,次のようなことが起こります。

Scene4:はまってる子はどんどん先へ,やらない子は20級くらいで止まっている 

 子どもたちの自主性にまかせておくと,だんだん差が出てきます。そして取り組む意欲も下がってくる子どもたちがいます。その原因を考えてみましょう。理由として考えられるのが次のようなことです。,
@自由に使える時間や台数が限られているので,順番を争ってまでしたくない
A家でやってくる子は,どんどん進んでいるので,かなわない
B休み時間は外で遊びたい
Cがんばっても級があがらないので,おもしろくない
 さて,どのように解決しますか。いずれにしても,教師の頻繁な声かけが必要ですね。そのためにも,教師用の管理画面で,誰がどのくらい練習しているかを正確に把握することが大切です。特によく練習している子には,練習をしていることをほめる。そして,なぜ合格しないかを教師が実際に見て,アドバイスします。特にカタカナや,のばす音,句読点などの入力は,変換のタイミングや,ファンクションキーの使い方などを指導することで,入力ミスが減り,速度が上がります。または,級が上の方の子どもたちとペアを組ませることで,お互いの練習が促進されます。このペアの組み方として,
◇お互いの級を足して「30」以内のペアで練習する。
◇お互いの級を引いて「5」以内のペアで練習する。

ペアの組み方も工夫次第

等の具体的な組み方はいかがでしょうか。これは,台数が2人に1台という悪条件を逆手にとることができます。
 そして,最初に述べたようにローマ字入力をする場面を,授業の中に意図的に用意することで,子どもたちの眠っていたやる気を引き出すことができます。また,学校によっては,休み時間のPCが利用できないというところもあるでしょう。そのため,大切な授業時間を削り,ローマ字練習の時間を設ける必要がでてくるときもあるでしょう。授業として,キーボー島アドベンチャーを実施するときには,その時間の子どもたちの目標を決め,全員がしっかりとした学びを獲得するように計画しましょう。また,教師の指導が入るため,効率のよいスキル習得も期待できます。特に3,4年生なら,授業として定期的に行うことも必要だと思います。
 「家にパソコンがある子だけずるい」という考え方ですが,よくよく考えてみると,ピアノを習っていたり,スイミングに通っていたりするのと同じことです。なぜかパソコンやインターネットだけ特別視されるのは残念ですが,そのためにも,休み時間や放課後の開放への配慮が大切になってきます。極端な話ですが,家ですることができない子どもへの開放を優先することも必要かもしれません。

Scene5:問題に出てくる漢字が読めない 

 3,4年生の場合,進級していくと出題される漢字が読めませんね。数回読んであげると,次からは子どもたちは読めるようになりますが,誰が読むかですね。家でやる場合は,大人がついて読んであげることも可能ですが,学校の場合は,工夫が必要です。
○読める子が読んであげる。
○高学年が読みボランティアをする
○それぞれの級で出てきた漢字の一覧表を書いていき,その級に挑戦する子どもたちで読み回すようにする
 それぞれの級に出てくる問題は20〜50問程度です。RPGを解くための攻略本のようなものが,クラスごとにできあがるかもしれませんね。また,Scene4で組んだペアにより,漢字の読みをマスターした子が読んであげることもできますね。

・・・・さて,今回取り上げた指導法は,主に初めてローマ字入力を習わせるのに,どのようにするかということを中心にお話ししました。台数やカリキュラム,全学年までの既習体験など,様々な要因が重なって,現場の課題もまちまちだと思います。しかし,鍛えれば伸びるというのは,確かです。
休み時間だけを使った指導なしの取り組みを延々と続けるよりは,たとえば,短期間に集中できるような授業を要所要所に計画することで,確実に成果があがるものだと思っています。


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